今回の症例は私自身です。
松江に来てから通勤がなく、業務的にも運動量が少ないので、かなりの運動不足を自覚しています。そこで週に3~4回の頻度で呼吸が大きく乱れないスピードで15分~30分走ることにしています。
昨日も20分程度走り、直後は特に問題なかったのですが、寝るころになり左の足の甲あたりにだるい痛みが出ました。
主訴
左足背の重だるい痛み
所見
- 足関節を動かしても痛みに大きく影響はない
- 痛む部位を押圧すると痛みがあるが、左右差があまりない。
- 痛みをよく観察すると、最も痛い部位は足背だが、脛の方に痛みがつながっている
- 前脛骨筋部を押圧すると少し痛みがある(自分では強く押せないので表層の筋層のみの刺激)
鍼治療
下腿前側の筋群からの関連痛と考え、足三里付近に刺鍼。刺鍼すると脛全体に得気が伝わる。角度や深度を変えながら探ってみると、粘着性の組織にあたり、強い痛みが足背に伝わる。10分程度置鍼し動かしてみると組織の粘着性がなくなって得気も少なくなっている。鍼の方向を変えて長趾伸筋にあたると、こちらもかなり強い得気が足背に伝達する。
今回は実験的な意味もあり、メインの症状のある部位には刺鍼せず、足三里のみに刺鍼した。
治療後
下腿前側から、足背にかけて違和感がかなり残るが、重だるい痛みは感じない。
翌朝、意識してみると違和感はなく、痛みなくなっている。左下腿全体が右に比べ軽い感じがする。逆に右の足のだるさが気になる。
考察
足背の皮膚は浅腓骨神経支配。足背の筋、関節は深腓骨神経支配。今回は表面的な痛みではなく、筋肉の重だるさの症状なので、深腓骨神経が関与していると考えられる。深腓骨神経は下腿前側を前脛骨筋、長趾伸筋、長母指伸筋の間をそれぞれの筋に枝を出しながら下降している。そのため、これらの筋に異常があると深腓骨神経支配下の部位に症状が出る。
症状のある部位に刺鍼することはもちろん、その原因がどこにあるのかを考えて刺鍼することの重要性を改めて感じた。
おそらく症状の出ている足背だけに刺鍼しても、ここまで良い効果は出ないのではないかと思う。
昔から長旅の疲れを癒すために足三里にお灸をしていたという。今回灸ではなく鍼だったが、足の疲れをとる効果を強く実感できた。やはり鍼はスポーツ障害やコンディショニングに大きな力を発揮する。