某Q&Aサイトで回答したものを紹介します。おふざけなので補足は特にありません笑
藤枝梅安といういわゆる仕掛け人がターゲットを仕留めるとき鍼を打ち込みますが具体的にどの部位を損傷させて即死に追い込んでいますか?
藤枝梅安は鍼灸師という設定ですので、鍼灸師の私が回答してみます。せっかくなので、質問の答えである、どの部位を損傷させているか以外についても、あの暗殺術について鍼灸師の視点から解説していきます。
まず、このドラマを見たことがありませんでしたので、ネットに上っている動画を見てみました。暗殺場面しか見ていませんし、原作も読んだことがありませんので、映像外の設定についての知識は全くありません。その点については御了承下さい。
暗殺に使用している鍼について
映像を見る限り、長さ6寸(約18cm)程度、太さ直径3~4ミリ程度の鍼を使用しているようです。
これ以上長いものを使っている場面もありました。
このくらいの長さがあれば、鍼を握っても7,8cm以上刺さる部分が残りますので、十分に殺傷可能です。因みに、呼吸中枢のある延髄までの体表からの距離は、体格により差がありますが5cmくらいです。延髄の厚さは10mm~15mmです。
脳(延髄)や脊髄は硬膜という硬い膜で覆われていますので、現在日本で市販されている鍼で硬膜を貫通させるためには、かなりの力と技術が必要です。一般的な鍼治療では直径0.2mm程の鍼が使用されますが、梅安の鍼は10倍以上太いので、暗殺用に特別に作製したのでしょう。
この鍼の太さは暗殺するにあたって、重要な意味があります。ドラマのようにかなりのスピードで刺鍼するためには、ある程度の太さが必要です。
試しに手元にある、長さ18cm、太さ0.4mm(これでも現代ではかなり太いほうです)の鍼を梅安のようなスピードで自分の太腿に刺してみました。結果は表面に少し刺さりますが、鍼がたわんでしまい、一度で深くは刺入できませんでした。痛いので試していませんが、太さ1mm以上であれば梅安のようなスピードで刺すことができそうです。
刺鍼部位について
ここからが質問に対する回答です。
延髄に鍼を刺す事を前提に書いてきたのですが、なんとドラマの映像では鍼を延髄に刺していません。
昔の暗殺者は、延髄に鍼を刺すことにより、仕事を果たすものだと思っていたので驚きました。鍼灸学校でも必殺仕掛人は延髄を狙うと、先生が言っていた気がします。
ドラマでは、首の真ん中くらいの高さで、ちょうど喉仏くらいの高さに刺している場面が多いです。第4頚椎くらいの高さでしょうから、残念ながら延髄には刺さりません。いくつかの暗殺場面を見ていると、第7頚椎付近に刺している時もありました。
ドラマなので、延髄への刺鍼が正しく表現されていないのか、それとも梅安の暗殺術は頸髄への刺鍼術なのかは不明です。
しかし延髄に刺さなければ、梅安の任務が失敗に終わるなんてことはありませんので、ご安心ください。頸髄にしろ、延髄にしろ、梅安に刺された方々は死んだふりではなく、ちゃんと仏様になっているはずです。
延髄より下は脊髄が続いています。こちらも生命に関わる重要な部位です。
当時の医療技術では、頸部脊髄にあんな太い鍼を刺されてしまったら、蘇生させる術は無いので、仕事としては成功です。即死しなかったとしても、刺された瞬間手足は麻痺し、為すすべもなく息絶えます。
現代であれば、救急搬送され適切な処置を施せば、命は助かるかもしれません。但し、手足に麻痺が残り、車椅子生活を余儀なくされる事でしょう。
暗殺に使用したツボについて
さて、一応鍼灸師なので、梅安が使用したであろうツボについても触れておきます。
延髄に刺鍼するためには、後頭骨と第一頚椎の隙間を狙います。ツボの名前で言うと、風府です。風府のすぐ下に瘂門というツボがあり、そのツボを使用する場合は、鍼を少し上方向に向けることにより、延髄又は小脳に鍼が向かいます。
瘂門の横並びの天柱、風池などのツボからも延髄に到達できるのですが、個人により延髄に針が到達するための角度が異なるため、上級暗殺者向けのツボです。
これらの技術は仕掛人藤枝梅安のみが使用する事許された秘伝の技術であるため、一般の方はくれぐれも真似されないようお願いいたします。