北京堂鍼灸松江の松本です。
最近、運動不足のため、夜にランニングをしています。ランニングだけでは満足できなくなり、出来心で50m程のほぼ全力疾走を3本行ってしまいました。10年ぶり?にまともに走りましたが、意外と走れてしまうものですね。直後は何ともなかったため、まだまだいけるやん!なんて内心思っていたのですが、寝るころになり、腰に痛みが出てきました。やはり急激な運動は体に負担がかかります。運動会で張り切りすぎたお父さんが体を痛めた時の気持ちがよくわかりました。
腰痛の鍼治療を自分に行う
ということで、自分の体に痛みが出たときは、鍼灸師なので自分で鍼を打ちます。
右腰に鍼を刺し、得気があったので、しばらく置鍼し、その後すぐに寝ました。翌朝起きてみると、いつもだったらよくなっていることが多いのですが、腰の違和感が全く取れていません。
仕方がないので、朝っぱらからまた鍼を刺します。刺鍼してみると第4腰椎の肋骨突起付近にかなり硬さがあるのですが、痛みの感覚が全くありません。筋の状態が悪いと、刺鍼した時の感覚がなくなることがあるのですが、まさにその状態です。鍼を抜き差ししたり、刺入の角度を変えたりしても、なかなか筋肉の感覚が戻りません。いつもの腰痛の時には、少し鍼を動かすと感覚が出てくるのですが、今回はかなり状態が悪かったようです。
普通の鍼で十分な効果が得られなかったため、太い特殊な鍼を使用
通常の鍼で刺鍼しても、十分な得気が起こらず、筋の緊張も緩解しないため、特殊鍼を使用することにしました。 当院で使用している特殊鍼は、鍼先の形状が少し特殊で、太さも通常使用するものよりも太い番手の鍼です。なかなか改善しにくい慢性症状や、筋肉が持続的に緊張し、繊維化することで硬くなり、通常の鍼が刺入できない場合などに使用しています。
特殊鍼を刺入してみると、弾力があり、粘りがある筋層にもスムーズに刺入することができました。しかし相変わらず、鍼の響きの感覚がありません。数回鍼を抜き差ししてみると、腰全体と臀部にかけて、強烈な響きが発生しました。筋のゆるみを感じられるまで、結構な回数を抜き差しして、得気が少なくなってきたところで抜針しました。小殿筋中殿筋の前部にも違和感があったので、そちらも刺入すると、大転子付近と大腿側面に強烈な響きがあります。こちらも腰と同様に緩むまで運針し、抜針しました。
腰痛の鍼治療で腰砕けを人生初体験
立ち上がってみると、腰がふわふわした感じで、力が入りません。気を抜くと座り込んでしまいそうになりますが、少し歩いていると腰に力が入るようになってきました。もともとあった腰の重だるい痛みは取れて、代わりに筋肉痛のような痛みに変化します。結局この筋肉痛は刺鍼した日の夜まで続くことになります。しかし、もともとあった痛みに比べると、格段に快適に過ごせるようになりました。
翌朝になると筋肉痛もなくなり、外で軽く走ってみたところ、腰に違和感はありませんでした。腰は平気だったのですが、おそらく前々日の全力疾走の影響で体全体が重くだるく、走るのが億劫に感じました。
強刺激は良くも悪くも体への影響大
今回の腰の痛みはかなり強く、筋肉の状態も悪かったので、正直一回でここまで良くなるとは思っていませんでした。鍼が効くパターンの腰痛で、適切な箇所に、適切な刺激を与えることで、驚くほど速く回復することを改めて実感しました。
日常の臨床で、ここまで強刺激の治療をすることは稀です。慢性的な症状で何度も来院していて、治療効果が芳しくない場合に、筋肉が繊維化している部分へこのような治療を行うことがあります。
今回のような強刺激の手技を施すと、私の場合のように、脱力感が起きたり、筋肉痛が残ったりします。しかしながら、慢性的な症状に対しても劇的な効果がみられる例があるため、これらの副作用を考慮しても、実施する価値があります。もちろん患者の鍼刺激に対する感受性や、筋の状態、その日の予定等を考慮し施術を行います。
初めて当院の治療を受けられる方の場合、刺激量は少な目で調整しています。なぜなら、一度目の治療の際は緊張があり、痛みの感受性が増している場合が多い為です。初回で不安がある中で、あまりにきつい施術を行ってしまうと、次回以降来院しないということになりかねません。本来であれば、数回施術を行うことで、完治する症状であっても、一度目の施術で鍼治療に懲りて次回以降施術を行わないということになってしまった場合、その方の治る機会を奪ってしまうことになります。
とは言え、あまりに刺激量を落としすぎてしまうと、治療効果も下がってしまい、十分な効果が出なければ本末転倒です。個々の状態を見極めて、刺激量を調整していくことが重要なポイントになってきます。