患者
70代女性
訴え
スポーツクラブで荷重して行うスクワットのマシンを行ってから、右の臀部が痛むようになった。
所見
- 腰部全体に筋緊張がみられる
- 触診してみると、梨状筋と腸骨稜沿いの中殿筋部に圧痛がある。
- 痛みのせいで足を引きずるような歩行をしている。
- 前かがみになると痛む
- 痛みの局在は不明瞭で腰部にも痛みを感じる。
- 前に腰痛になったことはあるが、慢性的な腰痛ではなかった。
治療1回目
腰部の脊柱起立筋、大腰筋、小中殿筋、梨状筋に刺鍼。
大腰筋のL5L4付近に特に緊張がみられ、刺鍼時に強い得気があった。
臀部も全体的に緊張しており、大転子付近の深部は細い鍼での刺鍼が困難なであったため、太い鍼を使用。
治療2回目
前回治療後、50パーセント程度に痛みが軽減した。
前回と同様のポイントに刺鍼。臀部の緊張の軽減しているが、大腰筋の緊張度合いは前回と変化無く、刺鍼時の得気もかなり強い。
治療3回目
腰臀部の痛みは前回より良くなっているが、新たに鼠径部に痛みを感じるようになった。
側臥位にて腸骨筋への刺鍼を追加したが、腸骨筋自体の緊張はほとんどなく、刺鍼時の得気も起らなかった。鼠径部の痛みは大腰筋の痛みだと思われる。
刺鍼ポイントはこれまでのものに加えて、腸骨筋へ100㎜*0.4㎜を四本追加。
治療4回目
前回治療後からはあまり変化がないとのこと。日常生活での支障はほとんどなくなったが、ふとした時に痛みを感じる。
刺鍼後の痛み違和感は当日中に消失するとのこと。本日は刺激量を増やして治療を行う。
大転子周辺、仙骨際の大殿筋付着部、腸骨稜沿いの中殿筋付着部、L4L5付近の大腰筋は刺鍼時の抵抗が強いので特殊鍼を使用。
治療5回目
前回よりよくなった。刺鍼してみると、中殿筋、大転子周囲の深部の緊張はかなり低下している。仙骨際の大殿筋付着部と大腰筋には依然緊張がみられる。
基本の刺鍼に加え、硬結のあるポイントに特殊鍼を使用。
治療6回目
良くはなってきているが、違和感がまだ残る。
刺鍼すると臀部周囲の刺鍼時の抵抗が少ない為、今回特殊鍼は使用せず。
大腰筋の緊張だけが残っている状態。大腰筋刺鍼時の得気は当初よりも低下している。
治療7回目(最終)
ほぼ良くなったとのこと。
小殿筋、中殿筋は抵抗なく刺鍼できる。大腰筋には緊張が残っている。
大腰筋の緊張はあるが、症状がなくなったので今回で治療終了とする。次回の予約も取らないでいただいて、様子を見てもらうことにする。
考察
突発的に起こる痛みの場合1~3回程度で良くなることが多いが、今回は7回の施術を要した。慢性的に負荷がかかることにより、筋の状態が悪くなっていて、スクワットの動作がきっかけで痛みが生じたものと思われる。見かけ上、突発的な症状であったが、筋肉は慢性的な症状の際に見られる状態であった。主訴は臀部痛だが、根本的な原因は大腰筋にあると思われる。