私がこの業界に入る前の話です。
肩こりがひどかったので指圧、オイルマッサージ、整体、カイロ、タイ古式、リフレクソロジーなどジャンルを問わず様々な施術を受けている時期でした。
昔ながらの古いマッサージ屋さんに入ってみることに
中でも印象的だったお店は、横浜市の中心付近の駅近で、おじさんが一人でやっているマッサージ屋さんです。ビルの2階にあったため非常に入りづらく、看板や外装もあまりきれいではありませんでした。見た目はよろしく無いけれど、潰れずに営業しているということは、一定のファンがいる証拠だと解釈して入店することを決意。
普段着のおっさんがベッドで寝ている
階段を上り外から中を覗いてみると、ラフな格好のおっさんがベッドの上に横たわっていました。中に入るかどうかかなり迷ったのですが、おっさんがこちらに気づいたため、入らざるを得ない状況になりました。
中に入ってみると結構乱雑な印象で、2台あるベッドのうちの1台は昼寝用になっているようでした。入店してしまったことを若干後悔しつつ、促されるままベッドに横になりました。この時点では、施術に全く期待していなかったのですが、始まってみると驚くほどのテクニシャンだったのです。
おっさんの超絶テクニック
他のマッサージ店では力加減を強くしてもらうと、雑な印象になりがちだったのですが、おっさんのマッサージは綺麗にツボに入り、なおかつ余計な力みを全く感じさせない匠の技でした。
痛いんだけれども気持ちのいいギリギリのラインを攻めてくる、熟練のテクニックです。
おっさんにマッサージ師になることを止められる
世間話をしていると、どうやらこのおっさんマッサージ師は国家資格を持っていると判明。私もこの業界に入りたい気持ちがあることを話すと、絶対にやめた方がいいとのアドバイスをいただきました。そして、見ての通り経営的に厳しい状況だということまで教えてくれます。バブルのころまでは、黙ってても客が来る状況でかなり儲かっていたが、不況になってからは厳しい状況が続いているとのこと。今からこの商売をやってもおいしくないからやめた方がいいと助言されました。
やはり潰れてしまっていた。。
これだけの腕があれば、いくらでもお客さんが来そうな気もしますが、商売はそんなに甘くないということなのでしょう。現在はバブルのころとは違い、オシャレで、立地もよく、接客もよく、情報発信もしっかりしているリラクゼーションサロンがたくさんあります。昔と違い大半の人がインターネットを利用し情報収集をしてから来店します。そのため、腕だけよくても昔ながらの、のほほんとした営業スタイルでは厳しい時代なのかもしれません。
しばらくたってから、またその店に行こうとしたのですが、残念ながら閉店していました。
あれだけ施術がうまければ、ほんの少し店の魅せ方を工夫するだけで人気店になりそうな気がしました。過去の成功体験を引きずって、何も改善せずにいたのがまずかったのかもしれません。
おっさんの失敗から学ぶこと
私はおじさんの助言を無視し、勢いだけでこの業界に入りました。
あのおじさん実は私の通っていた学校の大先輩でもあり、マッサージ店を30年以上も経営してきた大ベテランです。新陳代謝の激しいこの業界で、30年以上に亘って営業してきた実績は素晴らしいことだと思います。
おじさんはリラクゼーションメインのマッサージでしたので、今の私とは営業スタイルが全然違います。しかし、おじさんから学ぶべきところはあります。
どれだけ技術が良くても時代の変化に対応できないと潰れてしまう。
私も現在は技術、知識の向上のための取り組みを行うことができています。今後10年20年と知識や技術への向上心を忘れずにいるとともに、時代の変化に対応できるような客観的な視点と柔軟性を持っていたいです。